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【もう少しだけ軽やかに、もう少しだけ緩やかに。】 【個人連載雑誌 / 第12号 / A5 / オンデマンドフルカラー表紙 / 72P】 『walking postcard』は、呼吸書房が発行する小さな雑誌です。 書き手はひとまず私ひとり。一冊の本にまとまる前の、小説や旅行記、短編や掌編、散文、詩、独り言などなどを、旅先から送る便りのように、気の向くままに、自由に、お届けできたらと思っています。
the letter from "rain forest"
現在執筆中の長編『すべての木陰に歌を』から、第一部「彼女について」を先行掲載します。 本当は2025年中に刊行したかったのですが、もうすこし時間が掛かりそうなので……申し訳ない。現在は第三部の終盤を執筆中です。 『すべての樹木は光』の続編となる『すべての木陰に歌を』は、樹木に変えられてから127年後、魔法が解けて人間に戻ったユハの物語です。 分量はおよそ37000字、物語全体の三分の一ほど。彼女が辿りついた遠い未来の風景を、どうぞお楽しみください。 そして、どうかユハの物語を最後まで見届けて頂けますように。
=============================== 赤い足跡はまっすぐに森を貫き、どこまでも、どこまでも続いた。木漏れ日にきらめく鮮血のように艶やかでありながら、彼女の素足に踏まれても擦れず、滲まず、肌を汚しもしない。その歩幅は広く、枝葉や板根に行手を塞がれようとも、ただ先へと進んでゆく。時折、転んだような形跡があった。形の崩れた足跡と、赤い手形。地面に手をつき、跳ね起きて、また駆けていったのだろう。誰かが。どこかへ。 「どこに行くの?」 何かが彼女に声を掛けた。彼女は立ち止まらなかった。言葉を失った者にとって、その声は、鳥の囀りや、蛙の輪唱と同じものでしかなかった。木陰に双眼が光り、歩きつづける娘を目で追った。



